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住み継ぐ人々

亜熱帯の出羽島で家族4人で暮らす

亜熱帯の出羽島で家族4人で暮らす

徳島県南部に位置する牟岐町の港から連絡船で15分にある出羽島。
中井貴彬さんとそのご家族は、3年前からこの島で暮らしています。
熊本出身の貴彬さんは、長く大阪で暮らしていました。
そこで妻となる美代子さんと出会って結婚、ふたりのお子さんに恵まれました。
自然が豊かな熊本で生まれ育った貴彬さんは、水資源に恵まれた場所に行きたいと感じていたと言います。

空家 古民家リフォーム リノベーション 牟岐 出羽島 海部郡 出羽島までは牟岐港から定期船が出ています

造園業の仕事に携わるかたわらで、大阪で有機農業の講座を受講したりイベントを催したりする仲間たちとさまざまな活動に取り組みました。そうした活動を通して多くの人に出会ううちに、「自立して自分のスキルを磨くチャレンジをしたい」という気持ちが強まっていったと言います。そんな思いの先に、かねてより思い描いていた「移住」が現実味を帯びてきました。

移住先を探す旅をはじめた貴彬さんと美代子さん。
関西や中国地方、そして徳島県内で先進的な取り組みをする地域を巡った。
そして人懐っこく誠実な貴彬さんやその家族を見て、地域の人から「ぜひ移住を」と請われることも多かったといいます。

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けれどもなぜか「ピンとこなかった」という貴彬さん。
そんな折、牟岐町が地域おこし協力隊を募集していることを知ります。それまで牟岐町はおろか、徳島県南部に全く縁がなかった貴彬さん。
言い返せばSNSやメディアで「話題に登らない場所」でもあると感じたそうです。
「植物を育てながら暮らしの中で土地と触れ合いたい」と強く興味を惹かれ、家族で牟岐町への移住を決めました。

出羽島 出羽島港近くでは冬でもハイビスカスが咲いていました

地域おこし協力隊として牟岐町にやってきて移住者支援の仕事を任された貴彬さん。
そんな流れから、同じく牟岐町に属する出羽島と出会います。 同じ牟岐町でありながら、亜熱帯性気候に属していて年間を通じて温暖である出羽島。バナナやパイナップル、マンゴーといった植物が育つことも、植物に携わることを生業としてきた貴彬さんにとっては魅力に感じました。

「この島で家族と住みたい」と思った貴彬さん。
けれども出羽島には小学校も保育園もなく、はじめはそれが子育て世代にとってどうなのか、予想がつかなかったと言います。
町が用意してくれたお試し移住用の住居で暮らしてみて、心配していたことにさほど不便を感じず、移住を決意。

まずは1軒の空き家を借りて家族で住み始めました。
その後、もう1軒新たに借りてそちらを家族の住所に、最初に借りた家を貴彬さんの「事務所」にしました。

都会暮らしとのギャップと島暮らしの愉しみ

築年数が深い古民家の暮らしは一筋縄ではいきません。
大阪で生まれ育った美代子さんは虫が苦手。
今でも虫を見ると声を出してしまうと言います。
そして住居はトイレとお風呂が住居と別棟の外にあり、不便に感じることもあると言います。

空家 古民家リフォーム リノベーション 牟岐 出羽島 海部郡 縁側のある貴彬さんの事務所

また「事務所」として借りた住居は、大雨が降ると土間が水で滲み、雨漏りがしました。
けれどもそれを「どうやって改善するか考えるのも楽しい」と、貴彬さんは言います。
家の裏にある石垣を積み直し水の通り道を作ることで雨の日の水はけを改善。
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また、裏庭を開墾して自然農法でさまざまな野菜を育てるのも楽しみなのだとか。バナナの木が植わっていたり、米、ミント、バジル、と、さまざまな種類の作物が植わっている裏庭。

貴彬さんは閑散期の秋冬に少しずつ手入れして整えて行っています。「獣被害がないのがいいんです」と、貴彬さんと美代子さん。
離島の出羽島にはイノシシや鹿がいないため、せっかく育てた作物をそうした獣たちに食べられることがないのがありがたい、と。
だから「農業をしたいという人たちにもおすすめです」とふたりは言います。

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移住して古物件に住むことへのアドバイス

古民家暮らしを検討している方へのアドバイスをお二人に聞いてみました。
美代子さんは「あるものでなんとかすることも楽しい」と言います。
小道具を活かしてディスプレイしたり暮らしの道具としてうまく取り入れてたりしています。

出羽島に暮らすようになってから、空き家となってる家屋をいくつか借りて使わせてもらっているという美代子さん。
そうした家の整理をすることは「宝物探しのよう」と言います。

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また貴彬さんは「お金の問題」を気にする方々に向けてこう言います。
現代の日本の都会に生きていると、サラリーマンでひとつの会社に勤めることが当たり前だと思われているけれども、「人の生き方はもっともっと多様なものである」と。自分のあり方や、大切にしていきたいものが、田舎暮らしや古民家に暮らすことで見えてくるのだと言います。

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港からは牟岐港から到着した船が到着したことを知らせる汽笛の音が聞こえます。
小学校に通う長男は船から降りるとランドセルを置いて、友達とスケートボード遊びに興じています。
同じ船に乗って、美代子さんは保育園に通う娘さんを迎えに。
穏やかで豊かな暮らしを、中井さん一家は楽しんでいます。

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