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住み継ぐ人々

バランスを大切に、美しく住み継ぐ

バランスを大切に、美しく住み継ぐ

seeの事務所のほど近くに、大きな茅葺き屋根の立派なお屋敷があります。
この地で代々農業を営んできたFさんは、今もこの地域の世話役として地域の人々の面倒をよく見てくださっています。
他所から引っ越してきた私たち家族も、日頃から大変お世話になっています。

“ご近所さん”としてのお付き合いはあるけれども、「一度この素敵な住居の話を伺ってみたい」と思い、取材を依頼したところ快く受けてくださいました。

茅葺き屋根の家
F邸のある北島町は徳島市のベッドタウンとして、田畑が埋められ振興住宅地がたくさんできているエリア。
F邸の周辺にも新たに造成された団地があり、新しい家が次々と建っています。
「昔はこの辺は全部田んぼで、向こうの鳴門立道線まで見渡せていたんですよ」と話すFさん。
Fさんの指差す方には数多くの住宅が建ち並び、その道を見ることができません。

新興住宅地 北島町
F邸の広い敷地には母屋、離れ、納屋があります。
「トタンを巻いていた茅葺の屋根は数年前にガルバリウムに巻き替えたんよ」とFさん。
当時、seeの事務所からもその工事の様子がよく見えていました。
勾配のきつい茅葺き屋根の工事はなかなか大変。
けれども信頼できる施工会社の職人たちの手によって、綺麗に仕上がりました。
「茅葺もいい状態で保たれていました」と笑顔を見せるFさん。
茅葺き屋根 ガルバリウム

茅葺部分の工事の以前に本瓦から葺き替えたスレート瓦とも色味も良く合い、築200年以上の母屋を雨風からしっかり守っています。

ここに住む理由は「縁があったから」

この家で生まれ育ったFさん。
「この家にこうして住んでいるのはたまたま偶然が重なったから」だと穏やかに話します。

Fさんは結婚して子どもができてからは、旧吉野川を挟んだ向かいの町に小さな家を建てて家族5人で暮らしていました。
子どもが大きくなって進学などで家を出た頃、年老いた両親と暮らすために生家であるこの家に戻ってきたそう。

古民家 棟札
Fさんが納屋や倉庫を解体した時に出てきた棟札を見せてくれました。
蔵の棟札には「文政」の文字が、東側の納屋の棟札には「天保」の文字が記載されているのが読み取れました。
文政は1818〜1830年、天保はその後1844年まで。
おそらく母屋はそれより前に建ったのではないかとのことで、今から約200年前に建てられたことになります。


今はご夫婦2人でこの家で暮らすこの家の間取りは昔ながらの田の字型。
「今でいう個人のプライバシーやいうんはない家やな」と笑うFさん。

それでもFさんは屋根を葺き替えたり、台所をリフォームするなど、こまめに手間も費用もかけ、この家を大切にしています。
Fさんのお父様も、手を加えてこの家を大事にしてきたと言います。
「親父と私がこの家に使ったお金で、今時の家が1〜2軒は建つかもしれん」とFさんは言います。

石積みの基礎

古い家に限らず、家を住み継ぐためには手間もコストもかかります。
日々の掃除だったり、建物の点検を行うことで不具合を早期に見つけ、修理修繕をして維持していく必要があります。
けれども「坪単価@@円、ローン月々@万円」と”商品”として売り出されている住居を”購入”する時には、どうしてもそういったコストは軽視されがちです。
Fさんの言葉を聞き、改めて住まうことの”知恵”に気付かされた気がします。

良さを生かして、時代にあった手を加え

Fさんのお気に入りのスペースが、庭に面した南側の広縁。
日中はここで新聞を読んだり趣味のことをしたりしてのんびり過ごしているそう。
よく手入れされた庭の木々も目を楽しませてくれます。

広縁

10畳と6畳の続き間には床の間と違棚があり、床の間には華道が趣味の奥様の生花とご主人の好きなアートが飾られていました。
家全体から凛とした空気を感じます。

床の間 生花

ご両親が暮らしていた西側の離れは、県外で暮らすお子さんの家族が帰省した時に寝泊まりできるようにリフォームしたそうです。
トイレや浴室、ミニキッチンもついていて、滞在中はお子さん世帯が自由に使えるようにしたのだとか。

古民家を住みつぐ

離れから母屋や庭を眺めていると、Fさんはこう言いました。
「建て替えするときも、建物高さやバランスを大事にしてもらったんですよ」。
Fさんが東側の納屋を建て替える時も、絶対に母屋より高さが高くならないように、そして大きさも以前と同じになるように工務店にお願いしたのだとか。
そして、それはお父様がこの離れを建てる時も同じだったそう。

母屋が建った江戸時代後期は電気も水道もなかった時代。
時代は進んでライフラインのインフラが発達し、便利な設備ができ、時代に合わせて住み心地よく手を加えてきたけれども、常に庭を含めた住まい全体のバランスを大切にしてきたというFさん。
古民家を美しく住み継ぐ大きなヒントが秘められているように思いました。

Fさん、ありがとうございました。

北島町 古民家

古民家 茅葺き屋根

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